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例として、8段70dBのAF-PSN設計する

汎用の低周波用オペアンプでOKです。フィードバック抵抗とパラに入っている 8pF のCは発振止です。使用するオペアンプによっては
数メガHzで発振することがありますから要注意です。5p〜20pFの適当なものでいいでしょう。
-入力(マイナス入力)の10KΩとフィードバックの10KΩは増幅度を決める抵抗ですから、値が正確に1対1になるようにテスターなどで確認
してからハンダ付けしてください。
汎用の10KΩ抵抗にに100Ω程度の半固定VRを直列につけて、結果としてゲイン0になるように調整してもいいでしょうが、部品点数が
多くなり調整も大変です。いずれにせよ8段2系列の全オペアンプでゲイン0を確保しなければたとえ位相がピッタリ90度を保っていても
加算器での合成時に逆漏れが生じますから位相調整と共に増幅率調整はPSN成功には重要なカギです。
(高級な金属皮膜抵抗の精度0.1%などを使うとこのような面倒なVR付加などは必要はなさそうです。少々高価ですがPSN部分だけに使用
 するにはそれなりに価値ありと思われます。)
この位相フィルターはオールパスフィルター(all pass filter)とも呼ばれますが、このオールパスは0HZから数十KHzまでの低周波信号を同じ
振幅レベルで通過させるフィルターという意味で、位相は90度変化しても信号の大きさは全く変わらないフィルターです。
位相曲線をアナログフィルターの振幅曲線と誤解されがちですが全く違うものですから10段のPSNにしたからといって周波数特性
が伸びるわけではありません。
8段80dB AF-PSN回路 を下に表示します。
図面をクリックすると拡大されます。
【注意】
この回路を元にした基板起こし、配布、販売などの商行為または類似の行為は禁止します。

【製作上の注意この図面には入力(IN)および、出力(OUT1 & (OUT2) にGNDに落とす抵抗が入っていませんが入出力とも
数KΩ〜10KΩ程度の抵抗でアースに落としてください。
このままでは全てのオペアンプの信号通路がアースからが浮いた状態になって
しまい、回路全体のインピーダンスが高くなり、オフセット電圧の影響、外部ノイズ、妙な回り込みの原因になります。
出力側に抵抗を入れると位相に関係するのではないか、と心配される御仁がおられるかも知りませんがCが入っていませんからRでアース
しても位相変化には関係はしません。
(元の回路図には解っているものとして記述していませんでした。) Oct/05/2014 ご質問があった為追記載しました。

テスターとCメータのみで作製する場合。

HAMSTOOLの R&C table の画面からデフォルトの値に近いコンデンサーを選び実測。その値を Input 欄に入力してRの値を算出する。
Rの値を10%程度可変できるよう固定抵抗とポテンションメータをシリーズに接続し、最終的にはHAMSTOOLにある抵抗値になるよう
テスターで確認しながら可変します。
例えば上列1段目、470nF(0.47uF)のCの値に対してHAMSTOOL R&C table 画面ではRは 34.703KΩと表示されていますので
33KΩ+5KΩVR とし、テスターでその値に追い込みます。Cの値が3桁の有効数字があるならばRも3桁合わせるようにします。
コンデンサーの値表示は不正確で誤差は10%-20%あるものも混じるのでコンデンサーの計測から始めてください。

ファンクションジェネレータ(低周波発振機)が準備できる場合

旧来のオーディオ発振機ではなく超低周波まで正確に発振できるもの、例えば 9.758Hz が正確に発振できる機器でなければいけません。
(別のコーナーでDDSを使用したこの用途に適した低周波発振機を作製します。)
PSNトップの入力端子から HAMSTOOL R&C tableに示す周波数の信号を入れます。テストする信号の電圧は高い方が位相の変化を
見やすいので 2Vrms くらいがいいでしょう。例えば上列2段目を調整するときはトップの入力端子から70.958Hzの信号を入れるということです。
(そのオペアンプの直前に信号を入力する必要はありません。)

各段それぞれオペアンプの入力端子と出力端子の間の位相が90度になるようオシロスコープ XY ポディションで前述のVRを調整します。
下の左写真、基板上で測定している様子を参考にしてください。

   

8段PSNの下列3段目の入出力の位相を計測しているところ。右のオシロ画面はXYで90度になっていることを示しています。
(この例は2.962Hzで測定しているため円が一周するのに時間がかかっているため明暗が出来ています。カメラのシャッタースピードが速いからです)
このようにして6段の場合は上下12個の、8段の場合は計16箇所のオペアンプで、指定された周波数でその位相差が90度位相になるように
RとCで構成するPSNネットワークの値を決めて行きます。

出来上がった全体のPSNを、スペアナ等で観測しながら各ポールのVRを微調整する方法では最終的に良い結果は得られません。
例えば、1000Hz付近で良くすれば150Hz付近が悪化し、「彼方立てれば此方が立たぬ」所謂堂々巡りの悪循環に陥ります。
面倒でも各ポールを90°に合わせ込むのが早道です。

   

こうして一つ一つ90度位相に決定していけば最終的には上列と下列の出力間で広範囲のAF−PSNが作製されることになります。
20Hzであれ5KHzであれ、AF信号が広範囲にわたって右のオシロのように90度位相が保たれます。

位相計を作製してより正確な PSN を作りたい場合。

サプレッション80dB以上のPSNを作製するには一つ一つのオペアンプの位相特性も正確に設定しなければなりません。
やり方は前述のオシロスコープでおこなった方法と同じですが、より正確に0.1度以内の位相誤差に押さえます。
オシロで目で見て計る方法はある程度までは追い込めても、オシロの精度や人の目の錯覚に左右されることが多く、この点位相計は強いです。

写真の自作測定器はファンクションジェネレータと位相計が同居しています。8段80dBのデータは本体にメモリーされていて
いちいちFREQノブを回さなくてもPSN pole up downで自動的に上列・下列の周波数が次々と出力される設計になっています。
勿論通常のオーディオ発振機としても利用でき、DDSsynthesizer によるきれいなサイン波形の単一信号が得られます。
別のコーナーで実際の製作の詳細を示します。

RFPSNの製作

高速のオペアンプを使えば安定した波形ひずみのないキャリアー信号が作れます。180度位相を分割して90度を作るやり方です。
例えばアナデバの AD845 AD847 など。(回路図面のオペアンプのピン番号は間違って2個入りのものが記入されています。気にしないで!)
1個入りの高速オペアンプはピン番号が異なりますので注意してください。(1個入りのオペアンプは、+VCCが7番、出力が6番です。)


 455KHz RF-PSNとして、OPEアンプ回路は左右どちらの回路でもOKです。大差ありません。また後段のボルテージフォロアーの
 入力抵抗は2.7〜10KΩ程度でいいでしょう。他の周波数で行う場合の定数は HAMSTOOL を参考にしてください。

RF-PSNもOUT1とOUT2をオシロスコープのXYに入力し結果が真円になるようVRを調整してください。 ほかの回路のトランジスターを
使った回路も同じように調整します。【注意】2SC1815のコレクターとエミッターに付いている560Ωはこの値である必要はありませんが
1KΩなら双方とも1KΩと同一の値にしなければいけません。こうしないと出力の90度位相が極端にずれてきますから
VR調整では追いつかない場合も出てきますので注意してください。
74HC74を使った場合は4倍の キャリアー周波数がいるため455KHzで2つの90度位相差を持つ信号を得るには1820KHzの入力信号が
必要になってきます。また0-5Vの矩形波で出力されるため多くの高調波を含んでおり思わぬ所にスプリアスが出現したり、また
キャリアーヌルもやや取りにくい欠点があります。ただ、周波数が変化しても90度位相は保たれるのは利点です。
ダイレクト方式の送受信機にはこの方法が簡単でしょう。(2つのDDS発振器で同一周波数で90度位相をもつ信号を発生させることは可能。)
(74HC74の出力は矩形波です。高調波を含んでいますからシールドや結線に注意してください。受信機に使う場合などは思わぬ所でピーが
出るかも知れません。)

   

4046と7474を使用して455KHz入力から90度位相差をもつRF-PSNを作る

1820KHzを準備できない場合でも(例えば既成トランシーバーから455KHz信号をもらって作る場合など)
90度位相差をもつ2個の455KHzキャリアー信号を得る方法です。
下の写真は455KHzの出力信号、オシロスコープXYリサージュ波形です。矩形波のときは円ではなく正方形になります。(中の写真)

回路図面中、左側は一般的な(1.2K,0.01uF,3.3K,2200p)で構成したループフィルター、右側はサイドバンドノイズを意識して
フィルターは(100Ω,10uF)でlock up time より filtering を意識したループフィルターの例です。

7474は1/4分周器として働き、その過程で90度位相差を持つ455KHzを出力します。4046はVCOとして1820KHzを7474に出力します。
VCOとして4046を使うに当たって11番、12番ピンの33Kと100KΩ、それに6-7ピン間の150pFは1820KHz用としての数値で、
他の周波数(ダイレクトコンバージョン受信機で3.5MHz×4発振など)で使用する場合はそれに応じた適切なものを選ぶ必要があります。
別に4046を使わずDDSで直接1820KHzを発振させ、74HC74に入力する方法もありこの場合はフェーズノイズは心配する必要
はありません。

     

下の3枚の写真、一番左は入力したDDS発振やTS690やTS850の455KHzのキャリアーに相当します。(DDSの直接波形やメーカー製
トランシーバーの波形やなのできれいな信号です)

写真中は回路図面の上で説明した一般的な(ということは誌上に出た、よく自作機などに使っている)フィルターを使用した例です。
驚くほどのFMノイズです。スペアナではこれだけ近接ノイズを見れますが、
オシロスコープではきれいなサインカーブとして表示されます。スペアナで見なければ「知らぬが仏」、何も気になりません。

一番右は上で説明した図面右側の100Ω、10uFでフィルターを施した
波形です。基本波に近接したサイドバンドノイズは入力したDDS信号とほぼ変わらないくらいきれいになっています。
(74HC74の出力なので1820KHzは1/4に分周されて455KHzになっています。)しかし矩形波なので1365KHz、2275KHzなどの高周波は
含みます。このキャリアーを送信機に使う場合は、バラモジでSSBになった後の後段でLCフィルター(LPF、BPF)などで
除去してください。

【注意】
矩形波が嫌で90度位相を作った挙句、LCローパスなどでサイン波形にしてからバラモジに入れようとするのは大変危険です。
サイン波形にする為のローパスフィルターの特性を全く同一にすることは事実上不可能で、差異のある2つのフィルターを通すと
折角90度位相を保った2つの信号に位相誤差を生じます。(遮断周波数が異なるローパスフィルターを通すと2つの信号の位相がずれる。
この辺がPSNを扱う難しい所です。)
従って、
SSBにしてから、またPSN検波してから、つまり目的を達成してから次のステージで不要な信号をローパスなどで切る方がいいと思います。

     

「PLL-VCOはサイドバンドノイズが多い」というのは事実ですがループフィルターの設計によっては元のDDS信号には及ばないものの
かなり綺麗な信号を得られる一例です。PLLもやり方次第です。
ロックアップタイムは少々長くなりましたが受信機のように常に周波数が動いているわけではなく、問題はありません。
SN比が30dBもの改善というのは見過ごすわけにはいかないでしょう。
この辺の定数で悩んでる方は是非お試しください。スッキリしない濁った音、あるいはベールをかぶったようなホコリっぽい音が
透明感のあるすっきりしたSSB音になります。ロックアップタイムを気にしたVFO用設計のループフィルタでは(RF-PSNに使用する)
SSBには向きません。

逆サイドを抑えるための、ちゃんとした加算器


送信機においてはバラモジをでたDSBを加算してSSBにするための、受信機においては逆サイドを削除したSSB信号として復調受信
するための加算器です。

その使い方は上の例のような加算ポイントでお互いの信号のアイソレーションが保たれる方法でなければ不要な逆サイドが無くなりません。
例えば左の1番目のFETの回路、DSB-1とDSB-2は途中に1MEGΩが入っているだけでお互いツーツー、電気的につながりあったままです。
お互い仲良く次段に行きましょうといった雰囲気でベクトル的に異質な、本来消えるべき信号を抹消することなく、次に進んでまったくNGです。

左から2番目は10KΩで出発し途中で100Ωでアースされて、お互いの見通しは多少悪くアイソレーションはそれなりにいいです。
厳密にする以外は許せる範囲です。しかし100/10000に分圧されているためDSB出力はかなりの電位が要ります。数V要るかもです。
(作る人おるか?→そんな奴おらんやろ!: 吉本興業のある漫才師の弁)

3番目はオペアンプの+入力で加算しようと試みています。この方式は間違いです。回路を見れば−入力とアース間に10KΩが入っていますね。
これでは下記にあるヴァーチャルショートの関係で、+入力は10KΩのハイインピーダンスの入力となり、一番左のFETに入力するのと同じ
ことです。当然全くNGです。

最後の方法が一番正統な回路です。+入力がアースされていているのでヴァーチャルアースになっている-入力は常にアース電位です。
オペアンプの -入力と +入力はヴァーチャルショート( virtual short 又は imaginary short とも言います)になっていてあたかも常にショート
したごとくに働き、両電極が同電位みなしてとして機能します。
(もしここに電位差が生じるとそれが出力側に増幅されてとんでもない大きな電圧を発生させます。これは別名、差動増幅器の機能ですね。)
従って+入力がアースになっているので当然として、-入力側から見ればそこ(今から行くべき-入力)は何もない単なるアースに見えます。
「えぇ!アースに信号入力するんじゃ出力でないじゃん!?」と思われるかも知れませんがちゃんと働くようになっています。
アースになっている所に2つ以上の信号をほうり込んでもそこはブラックホールみたいなもので別ルートからやって来た信号には何の影響
も与えません。これが2つの(3つでも同じ。ミクサーとしてもよく使います。)多信号にそれぞれのアイソレーションをとる理屈です。
実例では10KΩを介して2つの信号が加算されています。2つの信号の見通しは悪く、お互い見えません、アイソレーションは完全です。
実際には10K、10Kの真ん中に1KΩ程度のポテンションメーターを入れて2つの振幅レベルを微調し逆サイドを抑えます。

他、IFTなど高周波トランスに入力する方法を拝見したことがありますが、加算ポイントで2つのDSBが電気的に分離されているかが問題です。
実験したことがないので軽々には言えませんが、納得のいく結果を得るのは難しいと想像します。