トップメニューへ

3.5-28MHz受信機の製作(アウトライン)

受信機のブロックダイアグラムを示します。トップのバンドパスフィルターを必要分準備すればオールバンド受信機になります。
第1中間周波数として8830KHzを第2中間周波数を455KHzに設定しています。中間周波数として8830KHzを挿入した理由は、
中間周波数を1つにして、いきなり455KHzでは第1局発周波数に対するイメージ信号が次のフィルターでは完全に除去できないからです。

例えば中間を455KHzだけにした場合、3550を受信して出力として455KHzを得るには、(3550+455=) 4005KHzを局発信号とする
ミクサーが必要になります。しかし4005KHzをローカル発振とすると3550KHzだけではなく (4005+455=) 4460KHzも455KHzに変換されます。
バンドパスフィルターが4460KHzを十分除去出来ものならOKなのですがコイルを使う通常のものでは使用に耐えません。
4460KHzでUSB通信している局が3550KHz表示の受信機でヘテロダインの関係でLSBで聞こえるQRMが起こるかも知れません。そこで
3550KHzを受信するのに第1中間を8830KHz程度にすると第1局発は (3550+8830=) 12380KHzとなりイメージ信号は (12380+8830=)
21210KHとなります。これくらい離れると3.5MHz帯のシンプルなBPFで21MHzのイメージ混信は十分除去可能です。
8830KHzに変換された受信信号はさらに455KHzにヘテロダインするために第2局発 (8830-455=) 8375KHzと混合されます。
AD603のAGCアンプを通り455KHzのフィルター群を通ってからPSN検波部分に入ります。
PSN検波で使用する90度位相差の付いた2つの455KHz信号は、DDSで1280KHz台を発振させ7474で1/4に分周する過程で90度位相差
を得ています。この方法は455の周波数が移動しても(LSB USB ISB でキャリアーポイントが異なる)、常に90度位相を保ってくれる利点
があります。矩形波なので高調波のかたまりです。7474と検波器周辺のシールドその他をしっかりする必要があります。
作り方によっては特定の周波数で妙なキャリアー信号を受信するかも知れません。

受信機出来上がりのイメージです。

右のロータリーエンコーダーは通常の周波数同調ダイアル。周波数ステップはプッシュSWを押す度に矢印のように変化します。
10KHz → 3KHz → 1KHz → 100Hz → 10Hz → 1Hz の6通りです。1Hzステップの次は戻って10KHzステップになります。
電源オン時のデフォルトは1KHzステップです。
左のエンコーダーは455KHz発振を50Hzステップで可変するもので、フィルターのキャリアーポイントの変更やQRMを避けるためのIFシフトとして
機能します。LSB受信しているとき下側に混信があるとシャリシャリした高音のQRMに悩まされますが Narrow にしてエンコーダーでIFシフト
してやれば嫌なシャリシャリがスーと消えます。
左LCDの下の5つのプッシュスイッチはLSB、USB、ISBの切り替えで、
1:Wide-SSB 2:Broad-SSB 3:Narrow-SSB 4:ISB-STEREO 5:Other-SSB のメニューが切り替わります。
マイコンにより455KHzのキャリアー変更もフィルター変更も、PSN検波後の音声の切り替えも全て自動で行います。
右LCD下の11個の押しボタンは1つの周波数ステップの切り替えと、10個のメモリーポイントの設定用です。周波数を受信していてそこで
長押しするとその周波数がそのボタンにメモリーされます。

受信機の回路図面

 第1ローカル発振の回路です。 また、 トランジスタによるスイッチングの具体例です。

図面右上の方、NPNトランジスタが4個記入されていますがこれはトップのバンドパスフィルターの切り替え用です。
バンドパスフィルターは受信周波数により自動的に切り替わります。図面にあるように1-5MHzではピン27がH(5V)になります。
マイコンが受信している周波数を感知してどのピンをHIGHにするかを判断しています。図中の周波数範囲に入るとそのピンがオンになります。
例えば3.5MHzのBPFはRD4(27)ピンの電圧でダイオードスイッチかリレーを切り替えます。他の例では、受信周波数が10-17MHzになると
RD6(29)ピンがハイになります。ただしPICにはリレーを駆動出来るほどの電流余裕はありませんから図のようにTRを介して動作させます。
両極性の出力はFB801にトライファイラー巻きにしたコイルで図のように取り出します。この方法の方が高調波が少なくなります。

 第2(8830KHz台)と第3(450KHz台)ローカル発振の回路です。

第2、第3局発の回路説明と最終低周波信号のIMD。

AD9851の15ピン、VINNに付いている2本の100KΩは20、21ピンの出力の中点電圧を取り
出しクロック出力のスレッショルドを決める電圧を作ります。Cの104はそのための平均化
フィルターです。20ピン出力から16ピン(VINP)へのサイン信号がこの電圧を横切るた度に
クロックが発生します。1820KHzなので104-103くらいがいいでしょう。
0-5Vの矩形波は14ピンから出力されます。次に74HC74で4分の1分周される過程で90度の
位相差が得られます。2つの455KHz出力は74HC74の6番ピン9番ピンのQ、^Qを使用して
もOKです。
455KHzのフィルターは3K、6K、10KHz幅程度のものを想定しています。
PSN検波をしていますので3KHz1本では物足りないです。
またISBのステレオ受信するには少なくても10KHz程度の幅の広いものが必要です。
検波したLSB、USB信号も受信モードによりマイコンが判断し、自動的にリレーを切り替えます。フィルター切り替えも同時です。
10MHz以上の受信では下側からのヘテロダインに設定していますから、例えば、「1 : Wide-SSB」のままでUSB受信になります。
USB受信のために「5:Other-SSB」に切り替える必要はありません。この5番メニューは逆サイドを聞く場合だけ使用します。
上のFFTによる2トーンデータは、アンテナ端子から-33dBm(S9+40dB)、50ΩSG出力では80dBuを入力したときの最終AF信号を小野測器の
CF-360で解析した画面です。3次IMDは60dB取れています。

※第1局発用 PIC16F887に書き込むプログラムのダウンロード。※

※第2局発と第3局発用 PIC16F887に書き込むプログラムのダウンロード。※

【第2、第3局発に関するプログラムをインストールしたときの注意】
ダウンロードし16F887に書き込んだ、更の状態では電源オンすると1番のフィルターの選択と周波数 455.00Hz が表示されます。
但し、まだメモリーは一切されていませんので、例えば他の番号のフィルターを押すと不規則なとんでもない周波数が表示されます。
くれぐれもこの状態でSWを長押ししないように注意してください。やり方は以下の通りです。

1、まず電源を入れた状態では 1: Wide-SSB 455.00 と表示されますのでロータリーエンコーダーを回して 453.00 に合わせます。
     ここで1を長押しして OK memorized ! を表示させ周波数を記憶させます。1番の Wide-SSB のメモリー完了です。
2、このままの状態で(プッシュSWの番号は1のまま)エンコーダーを回して 451.50 に合わせ、ここで2番の
     2:Broad-SSB ボタンを長押しして2番を記憶させます。
3、以下同様に、先に番号を選ばず、まず周波数を設定して、その周波数をメモリーさせたい番号を長押しします。
     うまくメモリー出来ない場合は一度電源をオフにして再度立ち上げて 1:Wide-SSB 455.00KHz からやり直してください。
4、ちなみにわたしは 
     1:Wide-SSB 453.00KHz 2:Broad-SSB 451.50KHz 3:Narrow-SSB 453.50KHz 4:ISB-STEREO 455.00KHz
     5:Other-SSB 456.50KHz
     のように設定しています。くれぐれも、やみくもに押ボタンを長押しするとその周波数を記憶してしまうのでご注意ください。
-------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 デバイスを設置した基板。左:第1局発。右:第2と第3局発。
   

8830KHzのバンドパスフィルターについて

 
 
写真は手前が8830KHz帯のバンドパスフィルター基板、SL6440C
を用いた2つのミクサーが見えます。
奥に見えるのはトップの4バンド用BPF群です。
ここは手前より21、14、7メガと並び一番奥が3.5-3.8MHz用です。
切り替えはダイオードスイッチを2SC1815で駆動しています。
8.83MHzのバンドパスフィルターをはじめ、これらのBPFはトップの
メニューに出ている「LCフィルターの設計」の項目を参考にされて
ください。写真のフィルターはエクセルファイルの容量結合型BPFの
項目から設計しています。
手持ちのパーツに応じてノートン変換型やジャイレータ変換型を
選択してください。
この8.83MHz帯のフィルターの帯域幅は気にすることはないので
トラッキングジェネレータでスペアナ観察するまでもなく、
中心周波数でゲイン最大になるように調整すればOKです。
一昔前のTS830などトリオの製品に8.83MHzの200KHz巾の
セラミックフィルターが組み込まれていました。これを利用して
もいいかと思います。今ではもう手に入りませんが、、、

★SL6440Cによるミクサー★AD603によるAGC-IFアンプ★AN612による検波器★7474によるRF-PSN
★オーディオPSN★加算・減算、などは
それぞれの項目を参照してください。組み上げるレシピはすべて揃っていると思います。